地方企業が知っておくべき上場準備の3つのポイント

地方企業が知っておくべき上場準備の3つのポイント

デジタルキューブ 取締役/ 公認会計士・税理士 和田 拓馬

近年、地方企業の上場を取り巻く環境が大きく変化しています。TPM(TOKYO PRO Market)市場は、2024年に50社が新規上場を果たし、累計170社が上場する市場になりました。TPM市場は、形式基準(売上高や利益、流通株式比率など)を必要としない特徴から、堅実な経営基盤を持つ地方企業にとって、特に親和性の高い市場として注目を集めています。実際に、多くの地方企業がTPM市場を成長への第一ステップとして選択し、上場という選択肢がより現実的なものとなってきました。

本稿では、FinanScopeの開発・運営を通じて得た知見をもとに、地方企業が上場準備で特に注目すべき3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:「守るべきもの」と「変えるべきもの」の明確な区別

地方企業の多くは、長年にわたって築き上げてきた独自の強みがあります。例えば、地域との強い信頼関係、社員との密接な関係性、長期的な視点での経営判断などです。上場準備において最も重要なのは、これらの強みを活かしながら、必要な変革を進めることです。

具体的なアプローチ

  1. 「守るべきもの」の洗い出し
    ・地域との関係性
    ・重要な取引先との信頼関係
    ・従業員との関係性
    ・事業の独自性
  2. 「変えるべきもの」の特定
    ・意思決定プロセスの明確化
    ・数値による経営管理の導入
    ・情報管理体制の整備
    ・コンプライアンス体制の構築

特に注意すべきは、「属人的な経営」から「規律ある経営」への移行です。しかし、これは企業文化や企業風土を変えたり、経営スピードを落とすことではありません。むしろ、制度やシステムを整備することで、経営者がより本質的な判断に集中できる環境を作ることが目的です。

ポイント2:地理的制約をプラスに転換する

かつては「地方だから」というハンディキャップが語られることが多かった上場準備。しかし、現在ではむしろ強みになり得る要素が増えています。

具体的な活用方法

  1. コスト競争力の活用
    ・オフィスコストの優位性
    ・人材採用・定着の可能性
    ・生活環境の質の高さ
  2. デジタル活用による距離の克服
    ・リモートワークの積極活用
    ・クラウドツールによる情報共有
    ・オンラインでの専門家との連携
  3. 地域金融機関との協業
    ・TPM上場支援の活用
    ・地域ネットワークの活用(M&A による事業譲り受け)
    ・新たな融資機会の提案

特に重要なのは、地方金融機関との連携です。例えば、佐賀銀行のようにTPMの「Jアドバイザー」資格を取得する地方銀行が出てきたことや、事業承継・上場準備における追加資金の需要にも前向きな金融機関が増えています。これにより、より身近な場所で専門的なサポートを受けることが可能になっています。

ポイント3:段階的なアプローチの採用

上場準備は、一足飛びに進められるものではありません。地方企業においても、段階的に取り組みをしていくことが必要です。

具体的なステップ(例)

【フェーズ1:上場準備の検討】(上場2年前)

  • 現状分析と課題の洗い出し
  • 社内体制の整備計画策定
  • 基本的な規程類の整備
  • 資本政策の策定

【フェーズ2:体制整備・運用】(上場1年前)

  • 管理体制の整備・運用
  • 内部統制の基礎構築・運用
  • 人材の採用・育成
  • 事業計画の策定・予実管理

【フェーズ3:上場申請・上場審査対応】(上場6ヶ月前~上場)

  • 上場申請書類の作成
  • J-Adviserによる審査対応
  • 会計監査対応
  • 開示体制の構築
  • 関係各所との調整
引用:FinanScope サービス資料(P.12)

特に重要なのは、各フェーズでの成功体験の積み重ねです。例えば、月次決算の体制が整備できた、内部統制の基本的な仕組みが動き始めた、といった小さな成功を、組織全体で共有していくことが重要です。

まとめ:上場準備は組織の進化のプロセス

上場準備は、単なる実務的な準備以上の意味を持ちます。それは、組織としての進化のプロセスであり、持続的な成長のための基盤づくりです。

特に地方企業の場合、以下の点を意識することが重要です。

  1. 独自の強みを活かした変革
    ・地域との関係性を維持しながら、経営の近代化を進める
    ・制度やシステムを整備し、経営者がより本質的な判断に集中できる環境を作る
  2. 環境変化の積極的活用
    ・デジタル化による地理的制約の克服
    ・地域金融機関との新たな協業モデルの構築
  3. 着実な準備の積み重ね
    ・段階的なアプローチによる確実な進捗
    ・組織全体での成功体験の共有

重要なのは、これらの取り組みが上場後の持続的な成長につながるという視点です。上場はゴールではなく、新たなスタートライン。その先を見据えた準備が、真の成功につながります。

地方企業の挑戦をサポートする FinanScope

上場準備において最も重要なのは、「正しい一歩目」を踏み出すことです。これまで多くの地方企業の上場支援に関わってきた経験から、初期段階での適切な方向付けが、その後の準備プロセス全体を大きく左右することを実感しています。

FinanScope は、このような地方企業特有の課題に応えるため、以下のような特徴を備えています。

  • 標準化されたプロセス管理
    • 必要なタスクが標準で設定済
    • タスクごとの期限管理で優先順位が明確
    • 進捗状況を可視化しメンバー間で共有
  • 地理的制約の解消
    • クラウドベースでの情報共有
    • リモートで専門家とタイムリーに連携
    • 24時間365日アクセス可能
  • コスト効率の実現
    • タスク単位で既存業務と並行実施が可能
    • 段階的な体制整備で現場負担の軽減
    • プロジェクト管理に関わる工数の削減

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上場準備に関する疑問や不安は、企業によって様々です。「具体的な準備期間は?」「必要な人員体制は?」「予算規模は?」など、実務的な質問から、「本当に実現可能なのか?」という根本的な問いまで、私たちは多くの経営者の方々と対話を重ねてきました。

そこで、まずは「無料個別相談会」で、皆様の課題やニーズをお聞かせください。企業独自の状況を踏まえた上で、具体的な道筋をご提案させていただきます。

相談可能な内容

  • IPO と M&A の比較検討
  • 上場準備における必要タスクの明確化と進め方
  • 企業価値評価・事業計画の策定方法
  • 一般市場と TOKYO PRO Market の選択について
  • FinanScope の具体的な活用方法

特徴

  • 場所や時間を選ばないオンライン相談
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