
デジタルキューブ 取締役 / 公認会計士・税理士 和田 拓馬
IPO 準備プロジェクトの成功には、高度な専門知識を持った人材の確保をすることが一般的でした。しかし、IPO 実務に精通した人材は市場に限りがあり、多くの企業が人材確保に課題を抱えているのが現状です。
そうした中で注目されるのが、社内での人材育成による専門性の向上です。実務経験を積みながら体系的な学習を行うことで、短期間でも高い専門性を身につけることが可能になります。
今回は、業界未経験から IPO 実務に携わり、わずか9ヶ月で IPO 実務検定に合格した当社ファイナンス部の森さんにお話を伺いました。実務と学習を両立させた効果的なアプローチや、専門知識の習得がもたらす業務への具体的な効果について詳しくご紹介します。
IPO 準備に関わる人材育成を検討されている経営者や人事担当者の方、また個人のキャリア形成として専門性向上を目指す方にとって、参考となる内容となっています。
目次
担当業務と IPO 実務との関わりについて

── 現在の担当業務について教えてください。
現在は主に FinanScope の一次窓口として、お問い合わせ対応やアカウント発行、契約関連業務を担当しています。それに加えて、イベント準備やマーケティング関係のコンテンツ作成、バナー作成なども手がけています。
── IPO 実務との関わりはいかがですか?
入社前は金融や IPO 分野の経験は全くありませんでした。「IPO」という言葉は聞いたことがある程度で、上場や証券市場について説明することもできない状態からのスタートでした。
現在は FinanScope のサポート業務を通じて、IPO 準備の実務に日常的に触れています。お客様からの問い合わせ対応や資料作成などを行うことで、実践的な知識を身につけることができています。
受験を決めた経緯と目標設定
── IPO 実務検定の受験を決めた経緯を教えてください。
入社前の面談で和田さんから「IPO 実務検定というものがあるから、勉強してみるといいかもね」とお話をいただいたのがきっかけです。
業務で必要になる知識でもありましたし、デジタルキューブは資格手当も充実しているので、「どうせやるなら合格したい」という気持ちで取り組みました。
── 学習計画はどのように立てましたか?
当初は1年以内の取得を目標としていました。先に簿記3級の勉強をはじめていたこともあり、まず簿記3級を取得してから、IPO 実務検定の学習に取り組むというように、段階的に学習を進めました。
結果的に、簿記3級を12月に取得し、IPO 実務検定を翌年6月に合格することができました。約9ヶ月での達成となりました。
IPO 実務検定について
── IPO 実務検定の概要について教えてください。
IPO 実務検定は、IPO 準備に必要な実務知識を体系的に学習できる検定制度です。標準レベルと上級レベルがあり、私は標準レベルを受験しました。
受験料は標準レベルで約14,000円で、コンピューター受験のため結果はその場で分かります。会社法、金融商品取引法、機関設計、監査、開示など IPO 準備に必要な幅広い分野が出題されます。
特に会社法と金融商品取引法の部分は、内容が細かく分量も多いため、学習において最も苦労した分野でした。同じ監査業務でも会社法に基づくものと金融商品取引法に基づくものがあり、どちらの法律に基づいているかを整理して理解する必要があったのは、初学者には特に難しい点でした。
── 学習方法について詳しく教えてください。
実は、勉強と並行して IPO 実務検定対策のスライド作成業務がありました。社内勉強会用のスライドを2週間に1回作成する作業を通じて、全体像を把握することができました。
本格的な試験勉強は最後の1ヶ月で、1日2〜3時間程度でした。学習のコツとしては、以下の4点を重視しました。
- 全体像の把握を最優先:細かい部分から入るのではなく、まず全体の流れを理解
- AI 活用:問題作成や用語の言い換えなどに積極的に活用
- 図表での理解:スケジュール感や関係性を視覚的に把握
- 学習範囲の明確化:上級レベル部分をホッチキスで止めて、集中すべき範囲を限定
Udemy コース制作への参画
── Udemy コース「ゼロからわかるIPO準備の実務」の制作にはどのように関わりましたか?
社内勉強会用に作成していたスライドを基に、外部向けの Udemy 講座として発展させました。スライド作成からスクリプト作成まで幅広く携わりました。
制作する上では、初心者の視点を活かした分かりやすい構成を心がけました。専門用語の言い換えや重要ポイントの絞り込みなど、自分自身が学習した中で難しいと感じた部分を、よりわかりやすく伝えられるよう工夫しました。
── どのような方におすすめできるコースでしょうか?
「何も知らない人が IPO を理解するファーストステップ」として設計しています。IPO について基礎から学びたい方、IPO 実務検定の受験を検討している方、会社の上場準備に関わることになった担当者の方に特におすすめです。
テキストを読む前の全体像の把握にも活用いただけます。
実践的学習の効果と業務への活用
── 学習成果は実際の業務にどのように活かされていますか?
最も大きな変化は、IPO 準備のスケジュール感が理解できるようになったことです。FinanScope の強みであるスケジュール・タスク管理について、「いつまでに何をやらなければいけない」という感覚が身につきました。
以前は FinanScope のタスク一覧を見ても表面的な理解でしたが、今は「このタイミングで監査法人選定が必要」「現在の進捗状況はここまで」といった具体的な理解ができるようになりました。
顧客対応における専門性向上
── 顧客対応面での変化はいかがですか?
お客様との打ち合わせに参加させていただく際、話の内容をより具体的に理解できるようになりました。専門用語や業務プロセスについて、以前よりも深いレベルで会話についていけるようになったのは大きな変化です。
まだ専門家レベルではありませんが、一次対応として適切な情報提供ができるようになったと実感しています。ただ、FinanScope に関してのご質問に回答できるようになった程度ではあるので、今後の実務を通して IPO に関する内容についてもお役に立てるようになりたいです。
チーム内でのナレッジ共有
── チーム内での知識共有についてはいかがですか?
管理部の他のメンバーも IPO 実務検定に挑戦されており、私が作成したスライドを参考にしていただきました。「とても役に立った」という声をいただけた時は、自分の学習が他の人の役にも立っているという実感が得られました。
今後は、学習で得た知識を組織全体のナレッジとして共有し、チーム全体のレベル向上に貢献していきたいと思います。
専門性向上がもたらす価値
── 専門知識を身につけることで、どのような価値を感じていますか?
業務への理解が深まることで、より本質的な貢献ができるようになったと感じています。単純な作業ではなく、お客様の状況を理解した上での提案や対応ができるようになりました。
また、自分自身のキャリアの幅も広がったと実感しています。IPO 実務という専門分野の知識は、今後のキャリア形成において大きな資産になると考えています。 検定合格がゴールではなく、これからも実際の業務を通じてより深い理解を目指していきたいと思います。
まとめ
森さんのインタビューを通じて、実務経験と体系的な学習を両立させることの効果を確認することができました。業界未経験からでも、適切なサポート体制と本人の意欲があれば、短期間で高い専門性を身につけることが可能です。
特に注目すべきは、学習プロセスそのものが業務の一部として組み込まれていた点です。スライド作成業務を通じた実践的な学習は、単なる知識習得を超えて、深い理解と実用的なスキルの獲得につながりました。
IPO 準備における人材育成は、企業の成長戦略において重要な投資です。森さんの事例は、効果的な人材育成のモデルケースとして、多くの企業にとって参考になるものと考えています。
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森さんが制作に携わった Udemy 講座「ゼロからわかる IPO 準備の実務」では、IPO 準備の基礎知識を初心者にも分かりやすく解説しています。
【講座のPoint】
・わずか数時間で全体像を把握
– 上場準備の全体像から具体的な実務まで効率的に学習
・TPM から一般市場まで網羅
– 東京プロマーケットと一般市場の両方の準備スケジュールを体系的に解説
・実務に直結する関係者対応
– 証券会社・監査法人との効果的なコミュニケーション手法を習得
・法務・コンプライアンスを完全理解
– 会社法から金融商品取引法まで、上場に必要な法的知識を整理
・FinanScope の活用方法も習得
– 上場準備クラウドツールの効果的な使い方まで学べる実践的な内容
実際の学習経験に基づいた構成で、IPO 実務検定の受験準備や社内研修にもご活用いただけます。上場・IPO 支援業務を強みにしたい士業専門家やコンサルタントの方はもちろん、IPO 準備に関わる人材育成をお考えの企業様も、ぜひご検討ください。
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