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お客様について
ナウビレッジ株式会社 様
https://now-village.jp/
2020年創業から4年半という短期間で TOKYO PRO Market 上場を実現したナウビレッジ株式会社。同社はマーケティングコンサルティングと HubSpot の導入・運用支援を中心に事業を展開し、急成長を遂げています。今回は、同社の CFO である三宮様に、上場準備における FinanScope の活用事例についてお話を伺いました。

ナウビレッジの事業内容と HubSpot への注力
── ナウビレッジの事業内容について教えていただけますか?
私たちはデジタルマーケティングのコンサルティングを行う会社です。代表の今村が以前、株式会社 UZUZ という人材紹介会社を経営していた時、多くの経営者から「人材も困っているけど、マーケティングも困っている」という声を聞く機会があり、そこからマーケティングのコンサルティング会社を起業したのがナウビレッジの始まりです。
現在は、マーケティングの戦略立案から実行支援、さらにマーケティング人材の内製化まで一気通貫でサポートしています。具体的には、Web 広告運用(リスティング広告、SNS 広告)、SEO 支援、Web サイト制作、マーケティングオートメーションの導入など、デジタルマーケティング全般をカバーしています。
── どのような企業を支援しているのでしょうか?
私たちは企業規模や業界を問わず、幅広いクライアントのマーケティングを支援しています。2025年2月時点で300社以上の支援実績があり、上場企業から創業間もないスタートアップまで、さまざまな企業をサポートしています。
業界の内訳を見ると、人材業界が約100社で全体の3分の1を占めています。これは代表の今村が人材紹介会社を経営していた経験が活きているためです。一方、残りの200社以上は、IT・SaaS、製造業、小売・EC、医療・ヘルスケア、金融・保険など、幅広い業界に分布しています。
この業界横断的な支援実績が私たちの強みです。さまざまな業界で得た知見とノウハウを活かし、それぞれのクライアントに最適なサービスを提供しています。
── 現在特に力を入れているサービスなどはありますか?
2024年から、CRM 搭載のカスタマープラットフォームである「HubSpot」の導入・運用支援に特に注力しています。HubSpot は、マーケティング・営業・カスタマーサービスを統合的に管理できるツールで、世界135か国以上で25万8,000社を超える企業が導入しています。
2025年5月には HubSpot Platinum パートナーに認定されました。2024年1月より HubSpot 社の認定パートナーとして、「HubSpot」の導入支援、導入後のコンテンツ制作、ソフトウェア運用などを提供し、その成果が高く評価されました。
私たちの強みは、単なるツール導入支援にとどまらないことです。HubSpot 専門メディア「Marketing Spot」の運営や、YouTube チャンネル「ナウビレッジ マーケティングチャンネル」での HubSpot 活用方法の解説など、多角的な情報発信を行っています。さらに、独自開発した機能拡張サービス「Extension Spot」により、HubSpot をより使いやすくカスタマイズすることも可能です。
HubSpot の導入・運用支援を開始したことで、マーケティングによる集客から、CRM 機能を活用した顧客管理、そして顧客の育成・活性化まで、ビジネス成長の全プロセスを一貫して支援することが可能になりました。

上場準備における課題と FinanScope の活用
── 上場準備はいつ頃から始められたのでしょうか?
創業2年目から上場を視野に入れ始めました。1年目で想定以上に利益を出すことができ、「この営業利益をどう再投資するか」を検討した結果、新規採用や広告費だけではなく、ブランド力と組織健全性を高める上場準備にも投資する方が、サービスの差別化が難しいマーケティング領域では、長期的な競争優位につながると判断しました。
── FinanScope を知ったきっかけを教えてください。
あるイベントで、和田さん(当時:デジタルキューブCFO)とお会いしたのがきっかけです。ちょうど上場準備で行き詰まりを感じていた時期でした。当時の悩みは大きく2つありました。1つは「何をいつまでに誰がやるべきか」という全体像が見えないこと。
もう1つは、タスクや規程のフォーマットがどこにあるのか分からず、すべて手探りで進めていたことです。上場準備の経験者が社内にいない中、まさに暗闇の中を歩いているような状況でした。そんなときに和田さんに出会い、FinanScope のサービスを伺い、興味をもちました。
── 検討段階で他のツールと比較されましたか?
一般的なタスク管理ツール等と比較検討しました。正直、最初は「タスク管理ができれば十分では?」と思っていたのですが、実際に比較してみると、決定的な違いがありました。
一般的なツールは、確かにタスクの進捗管理はできます。しかし、「上場準備で何をすべきか」という肝心な部分は自分たちで一から考える必要があります。一方、FinanScope には上場準備に必要なタスクが体系的に整理されており、規程類のテンプレートまで用意されています。
例えば、「内部統制の構築」というタスクがあったとして、一般的なツールではそれを登録して終わりです。でも FinanScope なら、それを「文書化すべき業務プロセスの特定」「リスク評価」「統制活動の設計」といった具体的なサブタスクまで分解してくれている。さらに、それぞれに必要な文書のテンプレートもある。
この差は、経験のない私たちにとって決定的でした。タスク管理だけでなく、上場準備の「ナビゲーション」をしてくれる FinanScope の方が、上場という目標を最短で達成するには適していると判断しました。実際、この判断は正しかったと思います。
── 上場準備において特に難しいと感じていた点は何でしたか?
大きく2つの課題がありました。まず、上場準備において、具体的な業務内容や工数が予測しづらかった点です。例えば「未払い残業代の対応」というタスクがあっても、具体的に何をすべきか、どれくらいの時間がかかるのかが見えにくく、計画が立てにくい状況でした。
もう一つは、成長過程の会社ならではの予実管理の難しさです。創業から間もない5期目の会社なので、社員を1人採用するだけでも財務的なインパクトが大きく、予算管理が大変でした。
実際、上場準備のタスクリストを見ても、「規程の整備」「内部統制の構築」といった項目があるだけで、それぞれにどれだけの時間とリソースが必要なのか、経験がないと全く想像できません。私たちも手探りで進めていた部分が多く、想定以上に時間がかかったタスクもありました。
予実管理については、売上±10%、利益±30%という精度が求められます。しかし、創業間もない会社では、新規案件1つで売上が大きく変動しますし、社員1人の採用で人件費率が大きく増加します。この変動の大きさをどうコントロールするかは、本当に苦労しました。
── FinanScope の活用によってどのような点が改善されましたか?
タスクのスケジュールや状況が一覧で把握できるようになり、タスク管理が効率化されました。特に親タスク・子タスクの区分けにより、大項目だけでなく中項目・小項目まで細かく管理できるようになった点が非常に有効でした。例えば「規程の整備」という漠然としたタスクも、具体的な作業レベルまで分解できるようになったので、何をすべきかが明確になりました。
また、規程類のテンプレートが用意されていることで、一から作成する手間が省け、自社用にチューニングするだけで済むようになりました。これは、経験がない中で手探りだった私たちにとって、本当に助かりました。上場準備の標準的な型があることで、工数の予測も立てやすくなりました。
ファイル管理も一元化され、「どれが最新版か」という混乱も解消されたため、関係者とのコミュニケーションもスムーズになりました。

CFO としての役割と上場準備のアプローチ
── 上場準備における CFO としての役割について教えてください。
上場準備における CFO の役割としては、管理部門が3名と少数の組織だったこともあり、全体のディレクションから実務まで全てを実施しました。細かい部分はメンバーに手伝ってもらいますが、基本的には全てに関与していました。
また上場準備と通常業務を同時並行で進める必要があり、上場に繋がるように通常業務のフロー変更等を進めていきました。私が、経理・財務・人事・法務・総務などバックオフィス全般を統括していたので、効率的に進められたと思います。
スピーディに上場を進めるには、情報の集約と窓口の一本化が重要でもあったと思います。監査法人や J-Adviser、税理士法人など、さまざまなステークホルダーとのやり取りを私に集約することで、迅速な意思決定と対応が可能でした。
── 三宮様の経歴がどのように活かされましたか?
私は、新卒では営業職としてキャリアをスタートし、人事・経理・経営企画など幅広い職種を経験してきました。上場準備は、人事・法務なども含めた本当に幅広い知見が必要だったと思います。そういった仕事を一通り経験していたことは今回の上場準備で大きく活かされたと思います。
専門的な知識やスキルが必要な場面ももちろんあるのですが、J-Adviser や監査法人など相談できる相手は多くいますので、分からない部分は都度質問・相談しながらクリアにしていきました。こういう部分では、営業職で培ったコミュニケーション能力も大きく活きたと思います。J-Adviser や監査法人と良好な関係を構築することを重視し、多くのアドバイスを受けることができたと思います。
また代表の今村とは、UZUZ 時代の上司部下という関係でもあり、お互いの特徴や性格を理解できており、信頼関係が構築できていたことも大きかったと思います。この信頼関係があったからこそ、私は管理部門全体を任せてもらい、今村は事業成長に集中するという役割分担がスムーズにできました。
CFO というと会計や財務の専門家というイメージがありますが、実際には幅広い視野と、適切な専門家との連携力が重要だと実感しました。営業・人事・経理・経営企画という一見バラバラに見える経験が、上場準備という総合格闘技のような仕事では大きな強みになったと考えています。
── TPM 上場を達成されて、どのような変化を感じていますか?
一番の変化は「会社の基盤が格段に強化された」ことです。管理部門の責任者として、これは本当に大きな成果だと感じています。
もちろん、事業面でも「上場企業」というステータスにより新規顧客からの問い合わせが増加し、大手企業との商談機会も増えました。採用でも応募数が明らかに増えており、優秀な人材を獲得しやすくなっています。
ただ、取締役 CFO としてより重要だと感じているのは、会社の内部体制が整ったことです。内部統制システムの構築、各種規程の整備、決裁権限の明確化、予実管理の精度向上など、上場企業として求められる管理体制が整いました。これらは単なる「ルール作り」ではなく、会社が持続的に成長していくための「仕組み」です。
また、社員の意識も変わりました。「上場企業の一員」という自覚が芽生え、規程やルールを前向きに捉えてくれるようになりました。創業4年半という早いタイミングで制度を導入できたため、組織が柔軟な段階で全社員が自然に受け入れることができました。
「会社らしくなった」という表現がぴったりだと思います。事業成長というアクセルを踏みながら、ガバナンスというブレーキもしっかり効く。この両輪が揃ったことで、より安心して、より大胆に事業展開ができるようになりました。上場は決してゴールではありませんが、次のステージに進むための強固な土台を作ることができたと思います。
── 上場後も FinanScope を継続利用されている理由は何でしょうか?
上場企業としてより適切な運営をしていくために、専門的な知見を外部から取り入れることが重要だと考えています。例えば、どの情報の開示が必要なのか、どのような書類を提出すべきなのかといった点で、専門的なアドバイスが必要です。
J-Adviser に相談することもできますが、同じ事業会社でもある外部の専門家に相談できる環境があることで、よりスムーズに業務を進められますし、「こういうやり方もある」「これが必要だった」といった気づきが得られます。
実は、上場後の方が悩むことが多いんです。上場準備中は「上場する」という明確なゴールがありましたが、上場後は「上場企業として適切に運営する」という継続的な課題に直面します。開示のタイミング、開示内容の判断、新しい規制への対応など、日々判断が求められ、その点を外部に相談できることは非常に有難いです。
上場後の展望と FinanScope への期待
── TPM 上場を達成された今、今後の事業展開についてお聞かせください。
今後の事業展開において、特に注力していきたいのが大企業との取引拡大、地方企業への支援、そして海外展開です。
大企業との取引については、上場によって得た信頼性を最大限に活かしていきます。これまでアプローチが難しかった大手企業の審査も通りやすくなり、実際に上場後に問い合わせも増えています。この流れを加速させていきたいです。
地方企業の支援も重要なテーマです。代表の今村も私も地方出身ということもあり、地方企業のマーケティング支援には特別な思い入れがあります。地方には優れた商品・サービスを持ちながら、マーケティングで苦戦している企業が多く存在します。東京で培った最先端のデジタルマーケティングノウハウを、地方企業にも届けていきたいです。
海外展開も積極的に進めていきます。HubSpot Platinum パートナーとしての実績は、グローバルでも通用する強みです。まずはアジア圏から、日本企業の海外マーケティング支援を開始し、段階的に事業を拡大していく予定です。
もちろん、既存事業の深化や新サービスの開発なども並行して進めていきます。ただ、上場企業となった今だからこそ実現可能になったこれらの展開に、特に力を入れていきたいと考えています。「最先端のマーケティングを誰もが使いこなす世界」というビジョンの実現に向けて、より多くの企業に価値を届けていきます。
── FinanScope への今後の期待があれば教えてください。
上場後の開示関連のサポートがあるとさらに助かります。開示情報の要否判定など、その判断基準が明確になるような機能があると効率的だと感じています。
例えば、売上規模に応じた開示基準の自動計算や、事業提携など各種イベントに対する開示要否の提案機能があると非常に役立つと思います。
現在、開示の判断は都度マニュアルを確認したり、J-Adviser に相談したりしていますが、システム上で「この規模の取引なら開示が必要」「このケースは開示不要」といった判定ができれば、迅速な意思決定が可能になります。
また、開示書類のテンプレートがイベントごとに用意されていて、必要項目を入力すれば自動的に適切なフォーマットで出力される機能があれば、書類作成の時間を大幅に短縮できると思います。
上場準備では本当にお世話になりましたが、上場後の運営においても、FinanScope が「上場企業の運営パートナー」として進化していくことを期待しています。少人数の管理部門でも、適切かつ効率的に上場企業としての責務を果たせるよう、今後もサポートいただけると嬉しいです。
スムーズな上場準備のためのポイント
── 三宮様の立場から見た上場準備のポイントを教えてください。
あくまでナウビレッジの例ですが、上場準備のポイントは3つあったと思います。
第一に「スピード重視の進め方」です。必要書類は完璧を目指すのではなく、まず70点でもドラフトを作成して早めに提出する。必ず指摘が入り修正することになるという前提で、フィードバックをもらって改善するサイクルを素早く回すことが重要です。完璧主義は上場準備の敵だと思います。
第二に「専門家との協力体制の構築」です。監査法人や J-Adviser を「審査する側」ではなく「一緒に上場を実現するパートナー」として捉え、彼らの専門的な知見を積極的に活用することです。プライドやこだわりを持たず、柔軟に対応することで、最短距離で上場基準をクリアできます。
第三に「コミュニケーションの密度」です。定例会議だけでなく、チャットツールなども活用して日々やり取りすることで、小さな疑問も放置せずに解決できます。これにより大きな手戻りを防ぎ、効率的に準備を進められます。
また、ナウビレッジでは「創業5年以内に上場する」という具体的な目標を役員全員が共有していました。この共通認識があったからこそ、「どうすれば期日内に上場できるか」という建設的な視点で議論ができ、優先順位を明確にした意思決定が可能になりました。目標が曖昧だと、つい理想論や完璧主義に陥りがちですが、明確な期限があることで現実的な判断ができたと思います。
── 上場を目指す企業へのメッセージをお願いします。
上場準備は総合的な能力が求められますが、自分だけで完璧を目指す必要はありません。私は、自分自身で出来るのは80点くらいの準備だと考え、周囲の力を借りて100点を目指す姿勢を大切にしてきました。監査法人や J-Adviser、そして FinanScope のようなツールをうまく活用することで、チーム全体でスムーズな上場準備が可能になります。
私たちがやり遂げられたということは、多くの企業にも実現可能だと思います。特に TPM 上場は売上や利益の基準ではなく、体制の整備が主な要件となります。これは「やるかやらないか」の意志の問題です。必要以上に難しく考えず、今の状況でどう進めればよいかを考え、適切なサポートを受けながら進めれば、確実に上場が可能です。
実際、私たちも最初は「本当に上場できるのか」という不安がありました。管理部門はわずか3名、CFO の私も財務・会計の専門性があるキャリアではありません。それでも、明確な目標を持ち、J-Adviser と協力し、スピーディに行動することで、創業4年半での上場を実現できました。
大切なのは「完璧な準備ができてから始める」のではなく、「今できることから始めて、走りながら改善する」ことです。上場準備を通じて会社は確実に強くなります。従業員の意識も変わり、より良い会社になっていくと思います。その過程で得られるものは、上場というゴール以上に価値があると思います。

今回のインタビューを通じて、上場準備における効率的なタスク管理と柔軟な姿勢の重要性が浮き彫りになりました。三宮様が強調された「プライドやこだわりを持たない」という姿勢や、早めの行動と密なコミュニケーションの実践は、上場を目指すすべての企業にとって参考になる知見です。
ナウビレッジ株式会社が2020年の創業からわずか4年半で TPM 上場を達成できた背景には、明確な目標設定と適切なツールの活用があったことがわかります。今後、同社がさらなる成長を遂げていく様子も引き続き注目したいと思います。