目次
概要
近年、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場を目指す企業が増えてきておりますが、上場準備の段階から、J-Adviser への報酬、監査報酬、社内の人件費など、これまでになかったコストが発生します。
よって、上場を目指すかどうかについては、上場のメリットと上場関連のコストを比較することになります。
本コラムでは、TOKYO PRO Market への上場を目指した際に発生する上場関連コストについて解説していきます。
TOKYO PRO Market の概要
TOKYO PRO Market は、東京証券取引所が運営する株式市場の一つです。
TOKYO PRO Market の上場基準には、株主数・流通株式・利益の額などの形式基準(数値基準)がなく、柔軟なガバナンス設計による上場が可能となっております。
また、オーナーシップを維持したままで上場することができ、一般市場と比べて、監査期間が短い、上場コストが抑えられるなどの特徴があり、企業が上場するためのハードルが低く設計されております。
その他、TOKYO PRO Market と一般市場の主な違いは下記表の通りです。
項目 | TOKYO PRO Market | 一般市場 |
開示言語 | 英語又は日本語 | 日本語 |
上場基準 | 形式基準:なし 実質基準:あり | 形式基準:あり(株主数、流通株式等) 実質基準:あり |
審査主体 | J-Adviser | 主幹事証券会社、東証 |
上場申請から上場承認までの期間 | 10営業日(上場申請前にJ-Adviserによる意向表明手続きあり) | 2、3か月程度(標準審査期間) |
上場前の監査期間 | 最近1年間 | 最近2年間 |
内部統制報告書 | 任意 | 必須 |
主な投資家 | 特定投資家等(いわゆる「プロ投資家」) | 一般投資家 |
このように、TOKYO PRO Market は一般市場と比べて上場のハードルが低くなっているものの、一般市場と同じく「東証に上場している企業」であることに変わりはないので、上場後は、企業の知名度や信用度が向上する、優秀な人材を確保しやすくなる、社内の管理体制やガバナンスの整備が進む、資金調達が可能となるなどのメリットを享受することができます。
TOKYO PRO Marketへの上場までに発生する上場準備コスト
上場準備期間に発生するコストは、会社規模や業種や上場準備期間の長さなどによって異なりますが、一般市場に上場する場合のコストは1~2億円程度であるのに対し、TOKYO PRO Market に上場する場合のコストは 2,000~4,000万円程度と言われており、一般市場より大幅に低く抑えることができます。
このように上場コストを低く抑えることができる要因としては、上場基準が一般市場と比べて柔軟になっていることや、上場準備期間や監査期間が短いことが挙げられます。
また、上場時に資金調達を行う場合は、株式発行にかかる手数料を東証や証券会社に支払うことになりますが、TOKYO PRO Market への上場時には、オーナーシップ維持のために株式発行を行わないことが考えられ、これらの株式発行にかかるコストがかからないことも上場コストを抑制するひとつの要因となっています。
ただし、TOKYO PRO Market への上場コストが一般市場と比べて低く抑えられるといっても、多額の費用が発生することは避けられないため、上場によって享受するメリットとの比較が必要です。
その他、上場までに発生する主な上場準備コストは下記表の通りとなります。
支払先 | 内訳 |
J-Adviser | ・上場準備指導 ・上場審査 ・上場時の成功報酬 |
監査法人 | ・ショートレビュー ・監査報酬 |
信託銀行等の株式事務代行機関 | ・株主名簿の作成事務及び管理 ・株主総会招集通知の発送 ・議決権や配当等に関する各種権利処理 |
印刷会社 | ・発行者情報等の作成支援 ・ディスクロージャー ・IR情報の作成、開示支援 ・印刷費用 |
東証 | ・新規上場料・新株発行手数料(資金調達を行う場合) |
証券会社 | ・公募・売出による資金調達手数料(資金調達を行う場合) |
TOKYO PRO Market への上場後に発生する上場維持コスト
上場後も上場を維持するコストが発生します。一般市場での上場維持コストは年間 4,000~6,000万円程度であるのに対し、TOKYO PRO Market での上場維持コストは年間 1,500~2,500万円程度と言われています。
これは、コーポレート・ガバナンスや決算・開示の体制構築が、一般市場への上場と比べて柔軟な設計になっていることが要因のひとつです。また、新規上場時と同様に資金調達を行う場合は追加のコストが発生しますが、TOKYO PRO Market に上場している企業は、これらのケースが少ないことも要因としてあります。
このように、TOKYO PRO Market では、上場準備期間だけでなく、上場維持にかかるコストも一般市場より低く抑えることができます。
その他、上場後に発生する主な上場維持コストは下記表の通りとなります。
支払先 | 内訳 |
J-Adviser | ・上場後のモニタリング費用 |
監査法人 | ・監査報酬 |
信託銀行などの株式事務代行機関 | ・株主名簿の作成事務及び管理 ・議決権や配当等に関する各種権利処理 |
印刷会社 | ・ディスクロージャー ・IR情報の作成、開示支援 ・印刷費用 |
東証 | ・上場時価総額に応じた年間上場料 ・TDnet 利用料 ・新株発行手数料(資金調達を行う場合) |
証券会社 | ・公募 ・売出による資金調達手数料(資金調達を行う場合) |
その他発生する可能性がある人材コスト
どこまでの範囲を上場コストと捉えるかにもよりますが、J-Adviser や監査法人などに支払うコスト以外にも、人材面において一定のコストが発生することが想定されます。
上場に向けては内部管理体制を整備する必要がありますが、この一環として、経理やIRなどの管理部門の人材強化が挙げられ、例えば、上場経験を持つ経理人材や、CFO 候補となる会計士の採用を進めることが望ましいです。
一方で、そのような人材を採用することは容易ではなく、都心部では人材獲得の競争が激しく他社との引き合いになることが想定され、また、地方では人材そのものが限られることが想定されます。
また、適任の人材を見つけたとしても、実際に採用するには相応の人材コストの発生が見込まれます。例えば、CFO候補となる会計士や上場準備経験のある人材の採用を想定すると、役員クラスの給与水準の人件費(ストックオプションを含む)が発生する可能性があるため、上場に向けて発生する社内の人件費も考慮しておく必要があります。
FinanScope Management の利用により、上場準備をスムーズに行いつつ、コストも抑えることができる
このように TOKYO PRO Market へ上場を目指す際には、多くの課題とコストが発生しますが、FinanScope Management を利用することで、上場準備をスムーズに行いつつ、上場に必要なコストも抑えることができます。
FinanScope Management では、上場準備の各課題に対してタスク一覧が整理されており、各種テンプレートも揃っているため、上場の経験や専門知識を有する経理人材がいなくとも、スムーズに上場準備を進めることができます。
コスト面でも、例えば、FinanScope Management で提供されるタスク一覧の対応を主に行う経理人材を1名増員し、さらに必要に応じて外部のIPOコンサル会社の力を借りたとしても、FinanScope Management の利用料を含めたコストは、CFO候補となる会計士の採用コストよりも抑えることができます。
項目 | FinanScope Management 利用を想定した金額 | CFO 採用を想定した金額 |
CFO採用 | – | 1,000~1,500万円 |
IPOコンサル料 | 100~200万円 | – |
FinanScope Management利用料 | +α | – |
合計 | 200万円+α | 1,000~1,500万円 |
まとめ
本コラムでは、TOKYO PRO Market への上場を目指した際に発生する上場関連コストについて解説しました。
TOKYO PRO Market は、上場基準が柔軟で、上場コストが一般市場と比べて低く抑えることができることが特徴です。
上場を目指すと、J-Adviser への報酬、監査報酬、社内の人件費など、これまで発生しなかったコストが発生しますが、FinanScope Management などの上場支援ツールを活用することで、コストを抑えつつも、スムーズに上場準備を進めることができます。