地方企業のための IPO 支援の新しいカタチ ─ TOKYO PRO Market で拓く「戦略的な成長」への道

地方企業のための IPO 支援の新しいカタチ ─ TOKYO PRO Market で拓く「戦略的な成長」への道

デジタルキューブ 取締役 / 公認会計士・税理士 和田 拓馬

地方企業にとって、上場の壁は依然として高く感じられます。地域ごとのロールモデルの不在、情報へのアクセスや人材の確保、専門家との物理的な距離など、さまざまな課題が存在しているためです。しかし、TOKYO PRO Market(以下、TPM)という選択肢の急成長と、東京証券取引所(以下、東証)が打ち出した新たな方針が、上場を取り巻く状況を大きく変えつつあります。

私は公認会計士として多くの企業の財務や経営に関わる中で、地方企業が持つポテンシャルをなかなか活かしきれていない現状のギャップを常に感じてきました。そして 2024年10月、私が CFO として上場準備を陣頭指揮したデジタルキューブが TPM 上場(証券コード:263A)を果たし、今では「地方から上場した当事者」として語ることができます。本稿では、実体験と最新データをもとに、地方企業にとっての TPM 上場の現実と可能性をお伝えします。

TPM の現在地 ─「上場しやすい市場」から「戦略的成長の起点」へ

2026年5月末時点で、TPM の上場企業数は181社に達しました。これまでに累計で約230社が TPM に上場し、うち17社が一般市場へのステップアップを果たしています。

特に注目すべき数字があります。TPM から一般市場へのステップアップまでの期間は中央値で約2年1か月、時価総額は TPM 上場時から一般市場上場時にかけて中央値2.0倍に成長しています。また、TPM 上場後の売上高成長率を見ると、上場直前期を100とした場合、上場7年後の中央値は206と上昇傾向が続いており、TPM が企業成長の確かな足がかりとして機能していることを示しています。

【参考】プロマーケットの今後の方向性について(PDF)2026年2月18日 東京証券取引所 上場推進部

2026年5月時点で J-Adviser 資格を有する機関は22社に増加しています。フィリップ証券、日本 M&A センター、宝印刷をはじめとする多様な専門機関が TPM のエコシステムを支えており、地方企業が相談できる窓口は着実に広がっています。

そして2026年2月、東証が「プロマーケットの今後の方向性について」を公表しました。TPM を「一般市場上場とその後の成長を目指す企業が集う市場」として再定義し、全上場企業に対して「上場目的の明示・開示」を求める方針が示されています。TPM は今、成長意欲のある企業が目的を明確にしながら投資家・市場関係者と接点を持つ「戦略的な助走の場」へと進化しつつあります。

地方企業としての実体験から

私は香川県の出身で、京都での勤務や香港での駐在を経て30歳で地元に戻りました。地方企業の潜在力と、TPM の可能性を強く感じました。

実際に上場準備を進める中で実感したのは、地理的な制約はかつてほど大きな壁ではないということでした。当社は兵庫県神戸市に本社を置いていますが、クラウドツールを活用することで、東京の証券会社や監査法人との距離をほとんど感じることなく準備を進めることができました。

また、私たちが開発・運営する上場準備クラウド「FinanScope」を導入いただいたナウビレッジ株式会社が、2025年4月に TPM への上場を果たしました。マーケティングコンサルティングと HubSpot の導入・運用支援を主力とする同社は、創業からわずか4年半でのスピード上場を実現しています。取締役 CFO の三宮様は「完璧を目指すより、70点のドラフトを早めに提出してフィードバックをもらうサイクルを回すことが重要」と語っていました。地方・中小規模のスタートアップであっても着実に上場を実現できるという事例を、身近なかたちで確認することができました。

ナウビレッジ CFO が明かす FinanScope を活用した上場準備のポイント

地方企業が取り組むべき4つの準備

では、具体的にどのような準備が必要なのでしょうか。TPM 上場を実際に経験した立場から、4つのポイントを解説します。

準備①:体制整備 ─「最初から一般市場基準で作る」

規程類や内部統制の整備において、特に重視したのは「TPM 用の簡易版を作らない」ことでした。規程類は最初から一般市場基準で作成し、運用を開始することで、ステップアップ時の大幅な改訂を避けることができます。

一方で、全てを完璧にしようとすると準備期間が長期化します。「TPM 上場時点で最低限必要なもの」と「一般市場移行までに整備すればよいもの」を区別し、優先順位をつけて進めることが現実的な判断です。内部統制については TPM 上場時は任意ですが、業務プロセスの文書化と統制活動の設計は早い段階から着手することを勧めます。後から整備しようとすると、想定以上に時間がかかることを自社の経験から実感しています。

準備②:見える化 ─ 成長ストーリーと上場目的の言語化

東証の新方針として、上場目的(なぜ TPM に上場するのか、どのように活用したいのか)の明示・開示が全上場企業に求められます。一般市場上場とその後の成長を目的とする場合には、中長期的な成長目標・成長戦略、上場目標時期・上場予定市場・準備スケジュールなどの追加開示も促されます。

私は開示義務化を単なる規制対応として捉えるより、自社の成長戦略を社内外に明示する機会として活用することが重要だと考えています。「いつ、どの市場を目指し、そのためにどのような体制・業績目標を設定しているか」を言語化するプロセスは、経営の解像度を高め、J-Adviser や投資家との対話の質を上げることにもつながります。

企業価値の客観的な算定も、ステップアップを見据えた準備として重要です。DCF 法や類似会社比較法を活用して自社の株式価値を把握しておくことで、資本政策の設計や投資家との交渉における説得力が高まります。

準備③:専門家との連携

TPM への上場において、J-Adviser は企業の最も重要なパートナーとなります。J-Adviser を「審査する側」ではなく「一緒に上場を実現するパートナー」として捉えることが出発点です。ナウビレッジの三宮様も「専門家の知見を積極的に活用し、柔軟に対応することで最短距離で上場基準をクリアできる」と述べています。

監査法人の選定も早期に行う必要があります。TPM 上場に必要な監査期間は最近 1 年間ですが、実態として準備開始から2年程度を見込んでおくことが現実的です。

地方企業にとって、専門家との連携はかつて「東京へ行かなければ難しい」ものでした。しかし、オンライン会議の普及と地方金融機関による上場支援の参入により、地域に根ざした体制が整いつつあります。

準備④:地方企業ならではのアドバンテージを活かす

地理的制約をマイナスに捉えるだけでなく、地方企業としての強みを積極的に活用することが重要です。

まず、デジタル活用による距離の克服です。クラウドベースの上場準備ツールを活用することで、東京との物理的な距離はほぼ問題になりません。当社の上場準備でも、神戸・香川と東京の距離を感じることなく各専門家と連携を進めることができました。

次に、地域金融機関との連携です。近年、地方銀行が J-Adviser 資格を持つ機関と提携し、地域企業の上場支援を積極的に行う事例が増えています。地元の金融機関を通じた支援体制の活用は、地方企業にとって大きなアドバンテージとなります。

さらに、「東証上場企業」というブランドは、地方における人材採用・定着において強力な武器になります。地元出身の優秀な人材や、都市部での経験を積んだ U ターン人材にとって、上場企業で働くという選択肢は魅力的に映ります。地方企業が抱える人材確保という課題の解決策として、上場は有効な手段の 1 つです。

FinanScope が実現する効率的な準備体制

ここまで述べてきた4つの準備を、限られた人員とリソースで効率的に進めるには、適切なツールの活用が不可欠です。

FinanScope は、デジタルキューブ自身が上場準備で直面した課題から生まれたサービスです。「もっと効率的に、もっと確実に準備を進められる仕組みがあれば」という現場の実感から開発しました。

「体制整備」への対応

FinanScope Management は、TPM 上場に必要なタスクが体系的に整理された上場準備専用のプロジェクト管理ツールです。規程類のテンプレートも標準装備しており、ゼロから作成する手間を大幅に削減できます。2024年11月に追加したガントチャート機能により、プロジェクト全体のタイムラインが視覚的に把握できるようになりました。一般市場への IPO 対応機能も含み、ステップアップを最初から見据えた準備が可能です。

導入企業からは以下のような声をいただいています。

「上場準備には非常に多くのタスクが存在する中で、何をどの順番で着手すべきかが不明瞭でした。FinanScope を利用することで、各タスクの明確化・優先順位付けが可能になりました。」

「IPO 準備で大変なことの 1 つがタスク管理で、FinanScope を導入したことで一括管理できるようになり、今どのタスクがどの程度進んでいるのかが一目でわかるようになりました。」

「専門家による支援」への対応

FinanScope Consulting では、IPO・M&A の実務経験が豊富な公認会計士・税理士のネットワークを活かし、体制整備から上場審査対応まで専門家が伴走します。上場後の開示対応や、ステップアップに向けた戦略立案にも対応しています。

コスト面でのメリット

地方企業にとって専門人材の確保は大きな課題です。CFO 候補となる優秀な人材の採用には年間 1,000〜1,500万円のコストが必要となる場合もあります。FinanScope を活用することで、まずは経理人材1名と必要に応じた外部コンサルの組み合わせで上場準備を進めることが可能です。FinanScope の利用料を含めても年間200万円程度のコストで済むため、約5分の1のコストで必要な専門性を確保できます。

まとめ │ TPM を「戦略的成長の起点」として活用する

東証が打ち出した新方針は、TPM の役割を明確に再定義しました。単なる「上場しやすい市場」ではなく、成長意欲のある企業が目的を明確にしながら投資家・市場関係者と接点を持つ「戦略的な助走の場」へと進化しています。

TPM から一般市場へのステップアップまでの期間中央値は2年1か月、時価総額の成長率は中央値 2.0 倍。「いつ、どの市場を目指すか」を TPM 上場と同時に明確にし、逆算して体制・資本政策・成長戦略を設計した企業こそが、次のステージでの成長を実現できるでしょう。

地方企業が上場を実現するために必要な4つの準備を、テクノロジーの力を借りながら着実に進めていくことで、かつて「東京の企業だけのもの」だった上場は、今や現実的な選択肢となっています。デジタルキューブも、FinanScope 導入企業のナウビレッジ社も、地方・中小企業が上場を実現できることを証明しています。

無料相談会のご案内

FinanScope では、上場準備に関する疑問や不安を解消するための無料オンライン相談会を実施しています。本記事でご紹介した内容以外にも、企業の状況に合わせた具体的なアドバイスを提供しています。

相談可能な内容

  • 上場準備における必要タスクの明確化と進め方
  • 企業価値評価・事業計画の策定方法
  • FinanScope の具体的な活用方法
  • 監査法人・証券会社・J-Adviser のご紹介

特徴

  • 場所や時間を選ばないオンライン相談
  • 上場準備の進捗状況を問わず相談可能
  • 無料(相談料はいただきません)

ご相談はこちらから
https://meetings.hubspot.com/takuma6/finanscope-online

「地方から、新しい可能性を切り拓く」。一社一社の状況は異なりますが、その挑戦を私たち FinanScope は全力で支援します。